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しかし、若葉のいきいきとした様子を見ているのはなかなか悪くない。
漫画に大して興味がない樹も、話を聞いているだけで何故かその作品がとても面白そうに感じてくるのだ。
若葉が飾らず、本心から漫画が大好きだと訴えているからだろう。
「名作ばっかり。種類も豊富だし、漫画をあんまり読まない有栖川くんも楽しめると思うよ」
「あ、話聞いてたんだ」
「は?」
怪訝な顔を向けてくる若葉に樹はいや、別に! と慌てて首を横に振る。
あまりにもナチュラルに届いていないと思っていた自分の言葉が話に混ざっていたものだから、つい余計な一言を溢してしまった。
怒らせたか? と様子を窺うが、気にしていないみたいだ。また新たなお菓子の包みを開けている。
樹はホッと息をつき、再びプリントへと視線を落とした。
「有栖川くん」
「なに~?」
「単語、間違えてる」
「あ」
トントンと指差されたところを辞書とで照らし合わせる。一つアルファベットが抜けていたみたいだ。
指摘されたそれを消しゴムで消して、樹はもう一度単語を書き直す。
「有栖川くんって何気に字、上手いよね」
「何気にって酷いなぁ。これでも昔、習字やってたんだよ?」
「へ~。ねぇ、有栖川くん」
「ん~?」
「何でいちかの席に座ってるの?」
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