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眼鏡の奥の真っ直ぐな瞳が樹を映している。
若葉の言う通り樹はいちかの席に座っていた。
風がふわりと黄色いカーテンを揺らす。
樹はニコッと笑った。
「窓際っていいなって思ってたんだよね~」
「他にも窓際の席あるけど?」
「一番後ろって落ち着くし、居眠りしても先生に見つかりづらい! って、今授業中じゃないけど~」
シャーペンを動かしながら樹はふわふわと笑う。
風に任せて、時には包んで。
「ま、嫌いな人の席には座らないよね」
わかっているのだ。彼女が何を聞きたいのか。
樹の答えに若葉の視線が横に流れる。
「ま、言いたくないならいいですけど」
わざと真似て先頭に「ま」を付けた若葉は、いつの間に出したのだろう。先程とは違う棒状のお菓子をぽきん、噛み砕いた。
「そういえばさ、今日。幼馴染くんお弁当だったね」
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