二度目の初恋

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 その言葉に樹は単語を書いていた手を止め、パッと顔を上げた。 「そうそう! あれ、ね!」  普段はいちかと二人だけで昼食をとりたいと樹にだけ愚痴を漏らす皐月。しかし今日の彼は違った。  四限目のチャイムが鳴るといそいそと鞄を机の上に乗せて、いつも通りのコンビニパンが出てくるのかと思いきや、姿を現したのは綺麗に包まれたお弁当箱。  そわそわと身体を揺らし、樹たちと机をくっつけ終える前に「開けていい? 開けていい?」とお弁当箱といちかの顔を行ったり来たりの視線。あれは多分、他のことは目に入っていなかった。 「あれ、花咲さんが作ったお弁当だよね!」  慎重に指先を動かして、丁寧に丁寧に包みの結び目を解く。  蓋を開けて、まるで宝石が詰まっていたかのような喜びようだった。 「一口食べてさ『美味い! 美味しいよ! いちか!』って。瞳キラキラさせちゃって。思わず黙って見守っちゃったよ」  本当に嬉しそうで、終始興奮気味に感想とお礼を繰り返していた皐月。  それを聞いているいちかは少し恥ずかしそうに頬をピンクに染めていて、でも幸せそうに顔をほころばせていた。 「もう、幸せ絶頂って感じだな」  あのときの微笑ましい光景を浮かべ、樹はふふっと笑みを溢した。  それは誰が見ても本当に心からの笑顔で、若葉は少し目を丸くする。  そして、ハァ~、と盛大にため息をついた。 「有栖川くんって損な性格だよね」  若葉の顔は心底呆れていて、樹と目が合うと駄目押しのため息をもう一回。  若葉の言葉に、樹はムッと眉根を寄せた。
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