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「皐月さ、小さい頃本当に可愛かったんだよ」
二人ほどじゃないけれど、家もそこそこ近くてよく公園や空き地で一緒に遊んでいた。
その中で皐月はずば抜けて可愛くて、恋に落ちるのは自然なことだったんだ。
「俺、好きな子には意地悪しちゃうどうしようもないガキで、皐月のこと苛めてた」
「あらあら」
「その度、花咲さんがめちゃくちゃ怒ってさ~。もう地の果てまでも追いかけてやるって気迫で~」
皐月がお姫様なら、いちかは間違いなく姫のピンチには必ず駆けつけるナイトそのもので。
いつも泥だらけになって遊んでいた。
「小学校上がる前かな。思い切って皐月に告白したんだ。で、男だったって知って、三日はうなされたな~。……いや、一週間かな?」
「気付かなかったの?」
「全く。それくらい可愛かったし、幼稚園も違ったからさ~」
今ではすっかり黒歴史だ。……まあ、皐月もだろうけど。
樹はくすくすと笑う。
若葉は告白現場に立ち会いたかったと、とんちんかんな呟きを落とした。
「それでさ、最初は好きだった子が男だったっていうショック。でも何だかんだ言っても子供だからさ、その内また普通に遊びたくなるじゃん? で、次の問題が浮上。勘違いして男に告白してしまった恥。面倒くさいことに小さくてもプライドだけは変にあるんだよなあ」
「あぁ。まぁ、ね~」
「皐月と顔合わせるのも気まずかったんだけどさ。それより皐月がみんなに話したんじゃないかって。次公園に行ったら笑いものにされるんじゃないかって不安でたまらなくなったんだよな……」
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