二度目の初恋

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 ――大好きな親友の背中を押したのは自分の意思。 「ごめん。しつこく聞いて。ちょっと気になってたから。有栖川くんって何となく私と……いや、なんでもない」 「ああ。私と同じひねくれものだからって?」  実は河合さんも優しいよねーって笑うと、若葉はムッと口を尖らせた。 「ま、私は女だから? 有栖川くんみたいなことにはならないけどー」  ――蕾を持って、自ら境界線に立ったのも自分の意思。 「あ、やっぱり河合さん。内心皐月に花咲さんとられちゃってムカツク~とか思ってたんでしょ」 「……ムカツク」  ――その境界線を踏み越えなかったのも自分の意思、だ。 「大丈夫だよ。花咲さんは無駄に真っ直ぐだから」  茜色の光が教室を柔らかく照らす。 『皐月が諦めるなら、俺が貰ってもいいんだよね』  親友の言葉はいつまでも温かく皐月の背中を押すことだろう。 「……be動詞、抜けてる」 「げ」  より厳しくなった若葉の指導に、樹は何度も頭を抱えながら必死にシャーペンを動かすのであった。
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