甘い日常

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「いちか! このタコさんウインナーすっごく美味しいよ!」  ニコニコとお弁当のおかずを箸で摘まみ、口の中に放り込む。  そんな皐月にいちかは照れっぱなしだ。 「ただのウインナーだよ……」 「でもタコ型だよ? 凄くない? いちかって天才?」 「いや、結構できる人多いし……」 「俺はできない!」  きっぱり言うと、本当に美味しそうにお弁当をつつく。  これも、これも、と感想を言いながら褒め、喜んでくれる姿に、いちかも作ったかいがあったというものだ。  それにしても――。 「今日の皐月、テンション高いね……」 「だって本当にすっごく美味いし。それにいちかとふたりっきりだし!」  ペカーッ! と、眩しすぎる笑顔にいちかは思わず目を細める。  ふたりは階段を上がった屋上前の踊り場に座っていた。  日光がほとんど入らないここは薄暗く、他より少し空気が冷たいはずなのに、隣に太陽さんが座っているからだろう。春みたいに温かい。 「二人ともなんだか忙しそうだったね」 「できればこのままずっと忙しくしててほしい」  俺的には、とサラリとそんなことを呟くものだから反応に困ってしまう。  皐月の言葉には「ふたりきりで嬉しい!」とか「ふたりっきり、サイコー!」って気持ちが含まれていて、本来ならこそばゆい乙女心がいちかの胸をキュンキュンさせてしまいそうなところなのだが、あからさますぎて結局苦笑いに落ち着いてしまう。それが少し残念だ。  いつもお弁当を一緒に囲んでいるメンバーはというと、それぞれ外せない用事があるとのことで、四限目が終わると同時、お昼を持って教室を出ていった。  主に用事があったのは若葉と樹で、梨々は多分気を遣ってくれたのだろう。今日は他の友達と時間を過ごしたい気分なんだと、指に毛先を絡ませながら言われた。
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