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皐月がみんなでお昼をとることに否定的だったことは知っている。
けれど今日の晴れ渡りすぎの笑顔の数々に、もしかしたら自分が想像していた以上にみんなと食べることが負担になっていたのではないかと気になった。
皐月のことが好きだし、付き合うことになってからいちか自身もふたりっきりで過ごしたいって気持ちは勿論ある。
(でも……)
ぽん。不意に頭の上に乗っかった重みに顔を上げると、皐月がふっと微笑んだ。そしてぐしゃぐしゃといちかの髪を少し雑に撫でまわす。
「ちょ、皐月?」
「嫌じゃないって言ったら嘘になるな~」
「皐月がどうしても嫌なら私……って、ちょっと! そんなにしたら髪の毛絡まっちゃう!」
「あははは! 鳥の巣~!」
「もう!」
皐月の手を無理やりどかしていちかは乱れた髪を直す。
皐月はごめんごめん、と悪びれなく謝って、必死になって髪を整えているいちかの両手を掴み、膝の上に戻させた。
「俺が直してあげる」
自分でやったくせに「うわあ、これは酷い」と呟きながら先程とは反対に優しく。丁寧に指を通す。
口では怒りつつも、いちかはされるがままになっていた。
「本音を言えば俺はいちかとふたりがいい」
「……うん」
「でも、いちかはみんなと一緒がいいんでしょ?」
皐月の言葉にいちかは一度斜め下に視線を動かして、こくりと頷いた。
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