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「若葉とご飯食べるの楽しいし、一年の時から仲良くしてて」
「うん」
「多分言えば何だかんだ言いつつもオッケーって笑ってくれるとは思う。けど、それは嫌っていうか……。それに今皐月とこうしていられるのは若葉が話を聞いてくれたお陰だし」
「うん」
いつの間にか髪は元通りになっていて、目の前にいる皐月は頷きながらそれをパラパラと肩に落としたり、掬い取って指で撫でたりと遊んでいる。
そんな彼にいちかは少し頬を染めながら話を続けた。
「梨々ちゃんも背中、押してくれた」
「ふたりが仲良かったのは意外だったな」
皐月が複雑そうな顔で呟く。
文化祭以降。いちかは梨々のことを『見取さん』ではなく『梨々ちゃん』と呼ぶようになった。
本来なら同じ人を好きになった相手と、それも好きだった人が自分ではなく、その相手を選んだ。梨々の立場からしたら嫌いになっても、いちかと仲良くする意味も義理もない。そもそも梨々には以前「嫌い」だとはっきり言われている。
それなのに梨々は皐月と付き合うことになった数日後、いちかのところにちょろちょろっとやってきて、
『梨々がフラれるなんて有り得ない。皐月くんが本当に幸せか確信するまで諦めないから!』
そう言って、プイッと顔を逸らした。
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