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「昨日ちゃんと提出したプリントに頑張った感が滲み出てたとか褒められて、先生やる気出しちゃったんだって。それで再テスト。ぷぷっ」
「笑い事じゃないんだってば。河合さん~」
案の定邪魔されて機嫌を損ねた皐月にお小言を貰って落ち込んでいた樹は、若葉の説明に更にシュンと肩を落とす。
ふたりは偶然廊下で鉢合わせ、教室に戻るといちか達の姿がなかった為、もともと皐月のお気に入りの場所であったここに足を向けたらしい。
すぐにこの場所を頭に浮かべるあたり流石というか。何というか。次はもうちょっと別の場所を考えようと密かに皐月が考えていることは秘密だ。
「そもそも昨日英語のプリント提出なんてあったっけ?」
「ふふっ。いちか。私達にはなかったよ。私達には」
「皐月~。河合さんが苛める~~」
「煩い」
助けを求め伸ばした手を払いのけられ、樹はシクシクと泣きまねを始める。
しかしそれを心配してくれる仲間はどうやらここにはいないようだ。
「そうだよ。俺がバカだから昨日居残り勉強させられてたんだよ。河合さんに手伝ってもらって、何とか全部埋めて。でも河合さんはあくまで訳し方を教えてくれてただけだから、いろんなところに単語の意味とか教えてもらったこととかメモってて」
「うんうん。そうだよね。有栖川くんはよく頑張ったよ。お陰で先生の奥底で眠っていた教師魂に火を付けちゃったんだよね。努力って人を頑張らせる力を持ってるんだよね。素敵だよ。素晴らしいよ。有栖川く……ぶふっ」
「うわーーーんっ」
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