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「……なに? お前だったら触りまくるの?」
予定では樹は自分に共感してくれて、今後どう自制心を磨けばいいのかいい案を一緒に考えてくれるものだと皐月は勝手に疑っていなかった。
皐月の言葉に樹は「まくるのかはわからないけど~」とパンをむしゃむしゃ。
「好きな子には触りたいって思うのが普通じゃない? それで付き合ってるんだから触るんじゃないかなあって」
魔法瓶から湯気のたった紅茶を注ぎ、ホッと息をついている。
樹の言っていることもわかる。わかるけれどそれが出来ないから相談してるんだろうが! と皐月は叫びたい気持ちに駆られたが、流石に格好悪すぎるのでなんとか机の下で拳をぎゅっと握るだけに留めた。
「でも必要以上に触って引かれたら立ち直れないし」
呟いてからこれも格好悪すぎると気付いたけれど、もうどうにもならない。
にやついた樹の顔が憎たらしい。
「でもあんまり触んないと逆にっていうこともあるかもしれないよ」
「……逆って?」
「ん~?」
樹は一口、また紅茶を口に含んでから言った。
「皐月が触ってくれない。私って魅力ないのかしら。それとも皐月って私のこと本当はそこまで好きじゃないのかもっ」
いちかのつもりなのだろう。樹はグーの形にした両手を胸にくっつけ、ぶりぶりと身体を横に振っている。
どう見ても似ていないし、第一いちかはそんな動作はしない。
「ね? 皐月とは反対に花咲さんは触ってもらえないことに不安がってるかもしれないよ?」
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