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しばらくの間、焼けたトーストを食べたり新聞をめくったりしていた。やがてそれにも飽きて、本棚から推理小説で薄い物を何冊か引っ張り出し、読み始める。
一冊読み終わった頃、ベッドがもぞもぞと動いた。
「おはよう」
声をかけると、北澤が不機嫌そうな顔でこちらを見た。
「・・・あまり寝られなかった」
「そりゃね。一回起きるとね」
「お前のせい!」
僕を指差す。
「悪い。もう起きてると思ってたから」
「休日は寝坊するもんだ」
そこで僕が持っている小説を見る。
「それ何? 」
もう話題が変わる。僕は苦笑しながらお前の本だろ、と表紙を彼の顔の前までぐい、と突きつけた。
「ああ、これね。面白かったろ」
「うん」
彼はにっと満足そうに笑い、起き上がって伸びをする。少し焼けた、しなかやか手足。やや細身の体は、同じ二十七歳とは思えない。高校生のようだ。黒髪だから、余計若く見えるのかもしれない。大きな瞳がきょろきょろと動き、僕を見る。
「三日泊まるんだっけ」
「うん。月曜は祝日だから。良かったかな」
「ノープロブレム」
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