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「眠い!」
ドアを開けた北澤は、本当に眠そうだった。
「眠いなー、もう。お前よく休日に早起きできるな。ほら、入れ入れ」
パジャマ姿、ぼさぼさ頭の北澤は、のろのろと部屋へ歩いて行く。僕も後に続く。
彼はベッドに着くと、そのまま倒れこんだ。
「寝る。適当にやっといて」
そう言われても。僕は尋ねる。
「朝飯・・・ない? 食べてなくて」
北澤が顔を少しだけこちらに向ける。
「えー? 家にいるのに。食べてこいよ」
「食べるものなくってさ」
さすがに親と喧嘩して、とはこの歳では言えない。
「貧乏だねえ。・・・戸棚にパンあるよ」
僕は小さなキッチンへ行き、扉を開ける。
「悪いな。・・・、あ、くるみパンがある」
「それはだめ。食パンあるだろ」
「ああ。これね」
食パンの袋を開け、一枚取り出す。
北澤がふとんの間から右手をにゅっと出し、僕の後ろにある冷蔵庫を指し示した。
「マーガリンはそこ。コーヒーもあげよう」
「悪いな」
「親切だから。クーラーつけといて」
僕は食パンをトースターに入れ、冷蔵庫からアイスコーヒーのペットボトルとマーガリンを取り出し、エアコンのスイッチを入れた。
コップに入れたコーヒーに少しだけ牛乳を入れ、一気に飲み干す。
ふと、北澤も飲むだろうかと思った。
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