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「えーー? M大駅前店に行ったんですかーー? 行く時は私も連れてってくださいって言ったじゃないですか――」
オフィスに戻ると愛梨ちゃんに文句を言われた。
「愛梨ちゃんはエリアマネージャーでもなんでもないでしょ」
私の代わりに言い返してくれたのは映美ちゃん。
そう、私はエリアマネージャー。遅ればせながら、私の会社を紹介すると、都内でも有名なカフェチェーン店を展開していて、本社には戦略部が第1から第5まであり、担当エリアの売り上げをあげるための戦略を練っている。年上男性社員をさておいて私が「エリアマネージャー」って肩書を持っているのはカフェのスタッフとも年齢が近いから話がしやすいって言うだけ。私は戦略を練る社員と現場のスタッフとの橋渡しって訳。愚痴を聞きながら本音を引き出したりして、スタッフが働きやすくなる様にもしてる。だから、店舗の店長とはかなり仲がいい。
「M大の店長に会いたかったのになぁ。あんなに爽やかなイケメン。もうちょっと出世してくれたらお婿さん候補なんだけどなぁ」
愛梨ちゃんの結婚条件としては高収入というところも重要らしいがイケメンであればもっといい。イケメンというところではM大前店長は合格らしいがお給料面では一つのカフェをまかされているだけの彼は収入面ではいまいち、でも顔は気に入ってるから「彼氏」ではなく「ボーイフレンド」にはしたいらしい。
『イケメンのお友達がいるのは楽しい』
なんてことを言うから映美ちゃんに嫌われちゃう。映美ちゃんも可愛いくてモテる部類だからライバル心って奴かなぁ。そりゃあみんな高収入でイケメンの旦那様が欲しい。でも、人目を気にして黙っているのに、堂々と言ってのけて、そして、それが叶いそうなくらい可愛いのは……やっぱり女子に嫌われがちだよね。
「そんな風に仕事に関係なく会いたがるから、久実はあんたを連れて行かないのよ」
映美のきつい言葉に対して愛梨ちゃんは唇と尖らせるけど反論はしない。映美ちゃんがつっかかるのはひがみだと思ってるからだ。
私は、二人が大きく揉めない限りは口を出さないことに決めている。火に油だもん。でも、あとで映美ちゃんの愚痴だけは聞いてあげよう。
「モテるんですね。M大前店長」
視察でお昼のずれた私と直人君が」二人でご飯を食べてる最中、直人君が言い出した。
その声はなぜか低い。どうして?
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