全部あなたのせいなんだからねっ

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私は、直人君が不機嫌そうなのが少し不思議だったけど、そのまま話を続けた。 「私も入社した時からずっと面倒見てるから、生徒として可愛がってる感じ。あ、これ見て。こういうたいしたことないことで悩んでLINEしてくるの」 「LINEを他人に見せるなんてよくないですよ」 あれ? やっぱり声低い? 「LINEって言っても業務用だもん。この内容は部署の中で共有してるよ?」 「あ、そうなんですか」 今度は声が柔らかくなった。変なの。 「でも、彼、イケメンですよね」 「イケメンだけど、生徒は生徒だもん。それ以上でもそれ以下でもないよね」 それに……お化粧した妖艶な美しさを持つNaotoを見慣れてしまった私としてはイケメンのハードルは高いんだよね。それで現実の恋をいくら棒に振ったことか。 ちょっといいなって人がいても『zirconia』のライブを見た後だと顔がへのへのもへじに見えるんだよね。我ながらアホだと思うけどしょうがないよね。 でも、不思議に直人君の素顔は地味顔なのにへのへのもへじに見えない。可愛いくてしょうがない。なんだろ。実は地味顔でも幻滅しないのってギャップ萌え? ともかく、何かをしてる時はいいけど、こうやって向かい合って食事をすると気になっちゃうなぁ。 ごまかすために直人君ににこっと笑いかけると、直人君も笑い返してくれた。そんな幸せな昼下がり。 「羽田――!!」 テノールの声が私を呼んだ。
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