2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、直人君が不機嫌そうなのが少し不思議だったけど、そのまま話を続けた。
「私も入社した時からずっと面倒見てるから、生徒として可愛がってる感じ。あ、これ見て。こういうたいしたことないことで悩んでLINEしてくるの」
「LINEを他人に見せるなんてよくないですよ」
あれ? やっぱり声低い?
「LINEって言っても業務用だもん。この内容は部署の中で共有してるよ?」
「あ、そうなんですか」
今度は声が柔らかくなった。変なの。
「でも、彼、イケメンですよね」
「イケメンだけど、生徒は生徒だもん。それ以上でもそれ以下でもないよね」
それに……お化粧した妖艶な美しさを持つNaotoを見慣れてしまった私としてはイケメンのハードルは高いんだよね。それで現実の恋をいくら棒に振ったことか。
ちょっといいなって人がいても『zirconia』のライブを見た後だと顔がへのへのもへじに見えるんだよね。我ながらアホだと思うけどしょうがないよね。
でも、不思議に直人君の素顔は地味顔なのにへのへのもへじに見えない。可愛いくてしょうがない。なんだろ。実は地味顔でも幻滅しないのってギャップ萌え?
ともかく、何かをしてる時はいいけど、こうやって向かい合って食事をすると気になっちゃうなぁ。
ごまかすために直人君ににこっと笑いかけると、直人君も笑い返してくれた。そんな幸せな昼下がり。
「羽田――!!」
テノールの声が私を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!