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「えーーっと、あの写真どこにやったっけ?」
私はクロゼットの奥にしまってあったアルバムを取り出しては、中身を確かめていった。
「あ! あった! これ!」
そのアルバムの最初にはゴシックなメイクをした女と見間違えるように綺麗な男の人が妖艶な瞳でこちらに視線を送っていた。
その瞳は黒く縁どられ、さらにその周りを赤くぼかしていて、綺麗だけど少し怖い。
根元から毛先にかけて黒から赤にグラデーションがかって染められ、絶妙にその瞳にかかっている前髪。隠しているのに瞳の妖艶さを際立たせる。
二つの瞳の間を通る鼻筋はすっと線を引いたようにまっすぐで鼻梁が高く形良い。
その下の真っ赤な唇の端は少し引き上げられ、薄いその形は酷薄さを感じさせる。
ひきしまった顎に添えられた指の先には黒く長い付爪。キラキラ光るのは張り付けられたジルコニア。
細い首の下は赤と黒を基調としたパンクなファッション。ところどころ破れた隙間から素肌が見える。まるで血しぶきを浴びたように飛び散る胸元の赤。
今でも覚えてる。
Naoto。
彼は低音の響きと高温のファルセットがぞくぞくするような色気を放つ声を持っていた。
学生時代におっかけをしていたインディーズバンド『zirconia』のボーカリスト。
会社に就職して仕事が大変だったり彼氏ができたりして色々あり過ぎて、いつのまにかライブに通わなくなっていた。音楽はその時の流行りの物ばかり聞くようになっていた。
今、彼に会うとは思ってなかった。
私はぱらりと次のページをめくった。
そこには何の特徴もない可もなく不可もない地味な顔の男性の写真があった。
この写真がなかったらわからなかった。たまたま手に入れたNaotoの素顔の写真。
彼が私の会社に派遣社員としてやってくるなんて……。
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