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室内はじゅうぶんに明るかったので、フラッシュが発動する気遣いはなかったのだが、それでも時たまに光るので驚いた。
撮るほどに私は、自分が大胆になっていくのを感じた。しまいに顔だけでは飽き足らなくなって、彼女の様子を窺いながら、そっと掛け布団をめくっていって、のぞみの肢体を露わにした。
彼女は何も身に着けていず、ふだんは背筋をびしっと伸ばして、まるで定規をあてたような身体を、今はすこし折り曲げている。そのくびれに寄ったしわが、なんともいえず色っぽかった。
とうとう全身が現れたとき、私の興奮は最高潮に達していて、息遣いは荒くなり、手はぶるぶると震えてきて、自分でも抑えきれないほどであった。けれどもシャッターを切るにつれて、その興奮は次第に治まっていったのである。
ここまでやっておいて言うのもなんだが、私にそういう趣味はない。あくまで旅というものの魔力がそうさせたのだ。
その証拠は私はこれまで一度も、のぞみの職場に行ったことはないし、彼女の同僚たちの写真も撮ったことはない。
もちろんこの旅以降、妻の体を盗み撮りもしない。このとき一回ぎりである。
むろん妻には絶対に秘密だ。
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