4 夢は万里を走る

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 一夜明けて私たちは、この旅の主目的ともいえる、万里の長城を見に行った。  日本にいるのと同じ青空の下に、日本ではぜったい見られないだろうという、ただ野放図に広い風景があった。  なんだか子供のころに作ったものが、現実にここにあるみたいな気がした。しかもそれは実物大で、じっさいにそのうえを歩けるのだ。私がそんなことを考えていると、のぞみがまた別の考えを言った。 「なんだか大きなレールみたいね」  彼女らしい発想だ。さらに妻はこう続けた。 「さっきのガイドさんの話では、宇宙からだって見えるらしいじゃない。そうだとしたら、あの上を走る列車っていうのは、それこそ世界一大きな列車だってことになるし、走っている姿は宇宙からも見えるってことよね」 「銀河鉄道だね。ロマンチックだな」 「行ってみたいわね、宇宙に」 「じゃあとりあえず、試運転といきますか」 「そうしましょう」  私たちはいそいそと、長城の上り口に向かった。すると登ってみると案外に、造りがおおざっぱである。    のぞみがレールのようだといった、通路の両端の手すり部分も、床石の敷き方ひとつ取ってみても、なんだかガタガタしているようだ。  これではとても電車なんか走れない。それに勾配がたいへんきつく、私たちはいくらも登らないうちから、もう息が切れてしまったのだった。
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