3 のぞみは海を越える

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 食事が終わると、私たちは錦江飯店というホテルにチェックインした。のぞみが先にシャワーを浴び、続いて私が バスルームから出ると、彼女はもう眠っていた。  よほど疲れていたのだろう。ダブルベッドの窓側に、こちらに背を向けた形で、ほてりの静まった体を、しっとりと横たえている。    薄い掛け布団から覗いている、その白い首筋を見て、私はにわかにのぞみに乗りたくなった。けれどもすぐさまその欲望を打ち消した。そうして自分に強く言い聞かせた。 (彼女はもう引退したのだ!)  しかもいわば退職祝いも兼ねて、この旅にやってきているのだ。このときほど私は、現役時代ののぞみに乗らなかったことを、後悔したことはない。 考えれば考えるほど、堪らなくなってくる。そこで自分のスーツケースに飛びつくと、その中からこの旅行用に買った、デジタル一眼レフを取り出した。  上海タワーで使ったぎりである。まだ慣れないボタンを操作して、カメラをスタンバイさせた。 私は何度か試し撮りをして、背後のベッドで眠っているのぞみが、起きないかを確かめた。そうしておもむろに向き直って、すやすやと眠っている妻の寝姿を撮り始めた。
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