家族

5/8
前へ
/8ページ
次へ
白い部屋。 清潔であるが何もない。 病院だ、とわかった。 淡い光が差し込んで、きらりと光る。 時折黒く細い糸のようなものがちらちらと踊る。 窓から壁へ、寝台へ。 視点がゆっくりと移動してゆく。 寝台の上には女性がいた。 白っぽい浴衣を着て、長い髪は一つに纏められている。 痩せて、血管が透けて見えるほどに白い肌。 大きな目はこちらをじっと見つめている。 記憶を辿ってみる。 これは祖母だ。 その年頃の女性としては大柄で、顔立ちもはっきりとしている。 俺や妹が生まれて数年の間、祖母は闘病生活を送っていた。 当時は助かる可能性の方が低いと言われていた。 祖母の視線の先にいるのは、恐らくカメラを操作しているであろう父だ。 視線だけが何かを語りかけてくる。 優しさよりも強さの方が勝っているようにも見える。 揺るがない瞳だ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加