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白い部屋。
清潔であるが何もない。
病院だ、とわかった。
淡い光が差し込んで、きらりと光る。
時折黒く細い糸のようなものがちらちらと踊る。
窓から壁へ、寝台へ。
視点がゆっくりと移動してゆく。
寝台の上には女性がいた。
白っぽい浴衣を着て、長い髪は一つに纏められている。
痩せて、血管が透けて見えるほどに白い肌。
大きな目はこちらをじっと見つめている。
記憶を辿ってみる。
これは祖母だ。
その年頃の女性としては大柄で、顔立ちもはっきりとしている。
俺や妹が生まれて数年の間、祖母は闘病生活を送っていた。
当時は助かる可能性の方が低いと言われていた。
祖母の視線の先にいるのは、恐らくカメラを操作しているであろう父だ。
視線だけが何かを語りかけてくる。
優しさよりも強さの方が勝っているようにも見える。
揺るがない瞳だ。
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