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「こ~ら哲雄、な~に昼間っからさぼっとる!お客さん待ってるんだからとっとと働け!」
俺は元祖おしくら饅頭の三代目だ。
店を興した祖父は二十年近く前に亡くなり、二代目の父はちゃっかり早々に隠居した。
母は忙しい時には手伝ってくれるが、最近はそう忙しくもない。
店は、自称看板娘の祖母が切り盛りしていた。
そう、祖母は奇跡的に生還した。
あれから四十年、九十歳を過ぎても未だピンピンしている。
「小林もな、いい年してこんなボンクラとつるんでないで嫁さん見つけな」
祖母はいつでも一言二言多い。
「イイ子がよりどりみどりなんで迷ってるくらいですよ、余裕余裕」
小林はお調子者らしくよくわからない理屈をこねた。
「そんならうちの哲雄にもわけてやっとくれよ。このバカ、盛りもこないうちにハゲ散らかって」
「ババァ!じいさんや親父はこの年にはズルムケだったじゃねぇか!俺は少々スッキリしてるだけだ。あ、小林、映写機の修理代幾らだ?」
「部品代だけでいいっす」
「すまねぇ」
俺は小林に部品代と饅頭を一掴み押しつけた。
いい後輩だ。
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