1 それが彼女との出会いだった

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「.....ごめん。僕にも、分からなくて。君の後に続いて僕も落ちようと、さっきまでそう思っていたのに。勝手に体が動いていた。ごめんなさい」 ひとまず、正座をして姿勢を正してから丁寧に深く頭を下げた。 救けたのに謝っていることに少しばかり疑問を抱いたが、同じことを僕がされたらやはり怒るだろうと判断した。 謝ることには慣れている。 例え相手が一回り近く離れた子どもだとしても、簡単に頭を下げられる。 プライドなんてのは、僕の中に存在しないのだ。 長い、溜息が漏れた。 「いい、もう。なんか、気が削がれた。今日こそ、絶対死んでやるって意気込んでたのに。結局いつだって叶わないんだ」 「.....僕も。いつも死のうと考えていて、それを漸く今日に決めた。けれど、何故かこんなことに」 念の為、頭は下げたままで開口した。 「土下座させてるみたいじゃんか」と彼女が言って無理やり謝罪体勢を崩される。
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