1 それが彼女との出会いだった

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二本目の煙草を携帯灰皿に突っ込んで立ち上がる。 エマも続いて立ち上がり、「約束」と笑顔で小指を差し出した。 ゆびきりげんまんなんて、生まれて初めてしたな。 母親とも施設の大人たちともしたことはない。 それを言うと、信じられないと返ってきそうなので僕もぎこちなく笑顔を作って小指を絡めた。 変な笑顔だと罵られながら、僕らは別れる。 エマは僕とは反対方向に向かって歩いていく。 あちら側にバス停だとか駅だとかはなかった筈だ。 もしかするとこの近所に住んでいるのかもしれない。 若干ふらついているような頼りない歩き方だったけれど、暫く後ろ姿を見送った後に僕も歩き出した。 居場所がないと自覚した場所に戻るのは憂鬱だったが、仕事が終わればエマに会えるのかと思ったら、憂鬱な気分も多少薄れる気がした。 日本人形のように美しい容姿をしていながら、言葉遣いが乱暴で残念な女の子。 僕と同じように、虚しさを抱えた女の子。 空を仰ぐ。 星空が僕を照らす。 眩しくて目が開けてられないと錯覚しそうなくらい、残酷に明るい夜。 それが彼女との出会いだった。
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