2 暗闇の中で、もうずっと迷子になっている

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2 暗闇の中で、もうずっと迷子になっている

早朝に目を覚ます癖がある。 まだ陽も昇らない時間帯だ。 当然ながらカーテンを開けても暗闇が広がるだけ。 目が覚めてしまうともう一度眠るのは困難だ。 僕は暗がりの中で手探りで煙草ケースとライターを掴み、ベランダの窓を開けて手すりに寄りかかりながら火を付ける。 住宅が敷き詰まったつまらない景色をぼんやりと眺めながら、陽が昇るのをひたすらに待つのだ。 暗いところは、あまり好きではない。 徐々に心を蝕まれていく感覚がある。 光が欲しい。 眩しいくらいの、目が眩むくらいの、強い光が欲しい。 暗闇の中で、もうずっと迷子になっている。
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