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◇
「へぇー、私はさ、うまく眠れないんだよね」
ひたすらに煙草を消費していく僕には目もくれずにエマは呟いた。
今日は曇っていて星がよく見えない。
街灯も少ないこの場所には、暗闇ばかりが広がっている。
「寝るのが、下手?」
「うーん、なんか寝てるのに起きてるっていうか。眠ってる感覚がないの」
「ああ、眠りが浅いのか」
「うん、だから早く朝来ないかなって思うよ。夜の時間は苦痛」
「そうだね、暗闇に飲み込まれそう」
「.....いちいち厨二っぽい返しすんなし」
しているつもりはないけれど。
という返答は飲み込んだ。
本当に、黙っていれば美人なのに。
普段より深く吸い込んだ煙が肺を満たしていく。
真っ暗の中にひっそり浮かぶ煙草の火を見つめていると、隣から何処か納得したような声が聞こえてきた。
「だから煙草吸うんだ」
「.....ん?」
「暗いとこ苦手なんでしょ。ちょっとでも明るい方がいいから、そんなにどんどん煙草吸ってるのかと思って」
何本目か数えるのを諦めた煙草を地面に落としかけ慌てて持ち直す。
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