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煙草がないと落ち着かなくなったのはいつからだったろうか。
金銭面の関係で、高校を卒業してすぐに就職する道を選び、同じ社の人間たちがやたらと煙草を好んでいるのを見てから。
生真面目な自分は法律を守り成人するのを待って手を出し始めた。
成績が芳しくない時、叱責を受けた時、上手くいかない時に深く吸い込むと何だか落ち着く。
いつの間にか、手放すことの出来ない、まるでお守りのようなものになっていた。
緑色の地に金色のコウモリがあしらわれたパッケージを眺める。
ただ単に一番安いから選んだだけで、強さだとか味に拘りがあるわけでもなかった。
なかなか売っているコンビニがないのが難点だけれど、七年も世話になっているものを今更変えられない。
「あれ、もう22時まわってる」
僕がスマートフォンの光で腕時計を照らしながら言うと、エマは苦い顔をして溜息を吐いた。
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