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「エマ、家は近くなの?」
「.....まあ、そこそこね」
「送っていくよ、時間も時間だし」
「いい。シノブさんには来ないで欲しい」
全力の拒絶に心折れそうになりつつ、それでもと食い下がる。
金曜は流されるままに一人で帰してしまったが、冷静に考えると16歳の女の子がこんな暗がりで一人なんて危険すぎる。
「しつっこいな。終電逃したらシノブさんも困るじゃん。とにかく、私は此処以外でシノブさんと会いたくない。だから家まで送ってもらう必要も無い」
最後に「だいたいからして今までは一人で行き来してたんだから」と人差し指を突きつけられ、大人しく頷くことしか出来なかった。
彼女が言いたいことも分かる。
この場所以外で会いたくない、それは僕も一緒だった。
日常から切り離されたような静寂の中で二人きり。
此処だからこそ、僕とエマの会話は成立しているのだと思う。
そう考えたら、此処が今まで以上に酷く特別なものに感じた。
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