2 暗闇の中で、もうずっと迷子になっている

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しかし、帰宅を促す話題を振ったにも関わらずエマは立ち上がろうとはしなかった。 少しして、僕が煙草を吸いきるのを待っているのだと気付く。 あと半分残っていた煙草を灰皿に押し込もうとしていると、隣から「まだいーよ」とぶっきらぼうに言われた。 「もったいないじゃん。吸いきるまで付き合ってあげる」 「.....どうも。エマも時間、自分でもちゃんと確認しようよ」 「だって、私、スマホ持ってないし。腕時計とかもないし」 「えっ? 高校生なのに?」 再び煙草を落としかけて持ち直す。 今どきは中学生でもスマートフォンを持っている時代なのに。 よほど厳しい家なのだろうか。 エマの表情を見る限り、それ以上話をしたくなさそうだったので問い詰めるのはやめておいた。 ふと鞄の中に入れっぱなしだったある物のことを思い出し、煙草を咥えたままで鞄を漁る。 ああ、あった、一ヶ月前まで使用していた腕時計。 古くなってきたから買い換えたのだけれど、動作は問題なく捨てるのも勿体無いと悩んでいるうちに一ヶ月が過ぎていた。 デザインはいたって普通の男ものだ。 時計にだってそんなに拘りがあるわけでもないから。
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