2 暗闇の中で、もうずっと迷子になっている

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僕はすっかり傷だらけになってしまっている昔の腕時計を取り出し、エマの前に差し出した。 「これ、よかったら。お下がりで.....しかもメンズで使い辛いかもしれないけど。時間とかはちゃんと把握してたほうがいいと思うから」 エマは暫し瞬いてから、無言のままそっと腕時計を受け取った。 細い腕には当然ながら大きすぎて、ベルトの調整をしないと到底彼女が身に付けることは不可能だろう。 それでもエマは何だか嬉しそうに笑い、「ありがとう」と素直に礼を告げた。 エマの笑顔をきちんとみたのはこの時が初めてだった。 「人からプレゼント貰うなんて初めてかも」 「.....僕が使ってたものだけどね」 「普通に嬉しい。大きいからポケットに常備しとくね。サイズ合わせに行くのめんどうだし」 「ああ、好きにしてくれていいよ」 プレゼントが初めて、という部分にはあえて触れなかった。 きっと触れても話すのを拒否するだろうし、エマにとって聞いてほしいことではないだろうと感じたから。
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