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多分、僕とエマは『初めて』に関する事柄──常人ならば当然経験しているであろうが僕らはしていない事柄、そういうものも似通っているとのだ。
だから彼女が横にいても違和感があまりない。
「僕も誰かにプレゼントしてもらったことって今までないや」
「27年間一度も?」
「ああ。口に出すと寂しい人生だね」
「ほんとーにね。あ、もしかして催促してる? いたいけな16歳に」
「いたいけなって、自分で言うか?」
控えめな笑い声が静かに響いた。
エマは小さな両手で、大切そうに腕時計を包んでからポケットにしまいこむ。
その様子を見て、折角だったらきちんとした物をプレゼントしたら良かったと考えてしまう。
生まれて初めての贈り物が使用済みの物だなんて。
そこまで考えて、エマに気付かれないよう苦笑を浮かべる。
近づきすぎない。
いくら居心地が良いからといって。
この女の子との間にある線は越えてはならないのだ。
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