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◇
橋に到着する頃には息も切れ、額から汗が吹き出ていた。
食事を適当に済ませていたせいなのか酷く疲労している。
いや、無心で歩いていたけれど、三駅分も歩けば疲れるものか。
空虚のような静寂、眩いほどの星空、底の見えない闇。
時間を確認すると既に日付が変わっていた。
当然ながらエマの姿はない。
溜息と共に、小さな笑いが口から漏れた。
何をしているんだろう。
自分が滑稽に思えて、また笑う。
再び煙草を手に取ろうとしてから、頭を振って片手に下げたままだった弁当を取り出した。
「.....あれ? シノブさん?」
ふいに背後から聞こえた控えめな声に振り返る。
聞き間違いではない、エマの声だ。
暗くてよく見えないけれど、小柄な彼女が片足を庇うようにしてこちらに向かってきていた。
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