3 今の僕が、望むこと

4/9
前へ
/50ページ
次へ
◇ 橋に到着する頃には息も切れ、額から汗が吹き出ていた。 食事を適当に済ませていたせいなのか酷く疲労している。 いや、無心で歩いていたけれど、三駅分も歩けば疲れるものか。 空虚のような静寂、眩いほどの星空、底の見えない闇。 時間を確認すると既に日付が変わっていた。 当然ながらエマの姿はない。 溜息と共に、小さな笑いが口から漏れた。 何をしているんだろう。 自分が滑稽に思えて、また笑う。 再び煙草を手に取ろうとしてから、頭を振って片手に下げたままだった弁当を取り出した。 「.....あれ? シノブさん?」 ふいに背後から聞こえた控えめな声に振り返る。 聞き間違いではない、エマの声だ。 暗くてよく見えないけれど、小柄な彼女が片足を庇うようにしてこちらに向かってきていた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加