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4 来るかも分からない幸せには縋れない
死後の世界を信じているかと問われると、考えたことがなかったと等というつまらない返ししかできない。
とにかく『今』から逃げたくて逃げたくて、その後のことなんて何一つ興味がなかった。
そんな世界があるのかどうかは生きている人間には確認しようがないけれど。
「自殺すると天国にはいけないんだってさ」と、至って真面目な顔で呟いたエマを凝視する。
いや、若い子ならこういうことを信じていても普通のことなのかもしれない。
それとも僕が知らないだけで、死後の世界というものは証明されたのだろうか。
それはないだろう、いくら世間に疎くてもスマートフォンでニュースくらいはチェックしている。
反応がない僕を訝しんで彼女が視線だけこちらに向ける。
口を開けたままで惚けていた僕を見てエマは眉を顰めていた。
「ああ、ごめん。何かそういうこと言うの意外だったから」
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