1 それが彼女との出会いだった

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『早く死にたい』 その考えが衝動に変わったのはほんの些細な出来事だった。 ちょっとしたミスで上司に叱責を受けた後に、先日インフルエンザで欠勤したことを指摘された。 人付き合いが苦手なくせに営業職を選んでしまった僕は、辛うじて業績は中の下。 何年経ってもパッとしない僕に対して上司も苛ついていたのだろう。 「皆、休まずに頑張っているんだ。体調管理はちゃんとしろ」 予防接種をしていて、休日もほぼ家で過ごしているにも関わらず感染してしまった場合、体調管理とは如何にしたら良いのだろうか。 僕がぼんやりとそう考えていると、苛立ちを隠さずに態度に出している上司は更に続けた。 「俺も責任者の立場としてこの部署と皆を守りたいんだ。もっとしっかりしてくれないか」 バンっと音を立てて机を叩かれた。
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