1 それが彼女との出会いだった

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僕は「申し訳ありませんでした」と頭を下げて自分の席へ戻っていく。 ミスをしたのも、インフルエンザに感染したのも、何年ものらりくらりやっているように見られるのも全て自分の責任だ。 それくらいは僕も把握している。 しかし、その『守りたい』中に自分は入っていない様子を感じ取って、急激に全てを投げ出したくなった。 虚しい、と。 喫煙室で煙草を一箱吸いきった後に呟いた。 僕はどんな組織に所属していても、いつだって馴染むことができない。 親はいない。 友人と呼べる存在もいない。 恋人もいない。 夢中になれる趣味もない。 何となく生きている代償なのかもしれない。 人間として欠陥している。 そうなのだろう。 心の中が、虚しいで押し潰されそうになった時に僕は決意した。 だから、僕は今日この人生を終わらせるために電車を降りて、暗がりへと足を進めたのだった。
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