1 それが彼女との出会いだった

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ずっと口を閉じていた彼女は突然辺りをキョロキョロと見渡し、地面に落ちていた鞄を拾うと僕に叩きつけてきた。 日本人形、撤回しよう。 「.....何で止めんだよ」 美人には酷く似合わない汚い言葉遣いだった。 彼女の疑問に対して僕は何も答える術がない。 何しろ自分自身、いったい何をしているのか未だに頭が理解していないのだから。 「アンタだって死のうとしてたんじゃねーのかよ! ふっざけんなよ.....人がどんな思いで.....!」 彼女は口を噤んだ。 いや、涙が零れ落ちそうになって堪えたのだろう。 死を決意するまで、彼女はどれだけ苦しんだのだろう。 その気持ちが僕には痛いほど分かるというのに。
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