act.1夏美

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30歳を過ぎた辺りからだろうか。 女性特有のアレの前のイライラに悩まされる日が増えたように思う。 いわゆるPMS…横文字に呼び方を変えても、症状は同じだ。 自分自身のことなのに、コントロールが上手くできない。 でも、本当のイライラの原因は恐らく、別にある。 心あたりがあるのだ。 むしろ、理由はハッキリしてる。 ―――――嫉妬だ。 でも、ちょっと大人気なかったかも。 同期で10年越えの付き合いの里奈ですら、今日は遠慮がちだ。 そんな爆弾に話しかけるみたいにしなくても・・・ お昼まで気持ちを引きずったけど、どうにか担任としての職務は全うした。 園児には八つ当たりしなかっただけでも、私は自分を褒めたい。 って、そんなの当たり前か。 子供たちが降園して掃除もひと段落したタイミングで 里奈を自分の教室に呼び出して来てもらった。 だって、里奈は梓先生と一緒に年少のクラスの担任をしてるから。 梓先生にだけは聞かれるのは嫌だ。 10歳も下の新人相手に嫉妬だなんて認めたくない。 気付きたくなかったけど、 私やっぱり柴田くんのこと好きかも知れない。 けっこう本気で。 昨日偶然聞いてしまった 梓先生と柴田 くんの会話。 冷静になったら別にただの世間話の延長で、社交辞令だったのかも知れない。 でも、 「じゃー今度一緒に飲みに行きましょうよ!」 「良いですねー。真樹ちゃんと美沙子ちゃん誘ってもいいですか?」 「じゃ、僕は・・・越智先生じゃない人連れて行きますね」 「是非その方向でー」 今日は疲れたから早めに帰ろうとロッカールームで着替えていたら、 聞こえてきた会話。 是非その方向でー。じゃ、ねえよ! すぐにツッコミが入れられないくらい動揺した。 いつの間に仲良くなったんだろう、梓先生と柴田くん。 年少はスポーツ教室は年の後半にならないと始まらないから接点ない筈なのに。
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