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「私は『運命』だから君を選んだわけじゃない」
そうはっきり言われ、心臓が悲鳴をあげた。
浅ましい本音を見抜かれ、一刀両断された気がした。
――俺は夢川に『運命』だとずっと認めて欲しかったのだ。
ベッドに深く沈む俺の顔の両脇には夢川の手が置かれ、真上から注がれる強い視線が俺をそこへ縫いとめる。
自分が、まるで檻に囲われて逃げ場を失ったケモノのように感じた。夢川に囚われ、身じろぎ一つ、声を出すことさえできないそんな哀れなケモノ。
――いつもの夢川と違う。
αであることを知らしめるような威圧感にさらされた俺は、完全に夢川の支配下にあった。
「君が『運命』でも『運命』じゃなくても、失えないと思ったから、だから君にプロポーズしたんです」
紡ぐ言葉は平坦で、
「君しかいないと思ったから、私は君を抱いた」
怜悧で、
「誰にも渡したくなかった」
傲慢で、
「なのに――」
苦悩に満ちて、
「君は他の男に抱かれても平気なんですか?」
苛烈な、
「私以外の雄にここを――ひらいて、受け入れ、種を注がれることを望むのですか?」
灼熱をはらんでいた。
「違う! 好きで…! そんなこと、好きで望むわけないじゃないですか!!」
夢川の迫力に飲まれそうになっていた俺は、しかし、足の狭間のきわどい部分に手を差し入れられたことで我を取りもどした。
「なら、私のためだと言って逃げるのはやめてください」
俺の否定は耳に届いたはずなのに、それでも夢川の雰囲気は頑ななまま、崩れない。
「――君が、そんなに『運命』を気にするなら、探してもいいです」
「え…」
真逆のことを突然提示されて、俺の心臓は止まりかけた。
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