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そもそも、転校生を生徒会に引き入れたのは、火種になりそうな不穏分子を監視下に置くためだったと思われる。
どうせあの抜け目のない生徒会長の指示だろう。
ちなみに俺の初恋の相手は、この生徒会長の毒牙にかかってしまった風紀委員長だ。
純粋なあの人の未来が心配で、ダメもとでアタックしたが、「大切な人がいるから」と申し訳なさそうに謝られては諦めざるを得なかった。大切な人とはもちろん生徒会長の事である。会長め。俺たちの大事な委員長を幸せにしなければ絶対に許さん、と心に誓ったあの日、――俺は、夢川副会長…今の夢川社長に出会ったのだ。
その時の出来事が縁で、俺は夢川社長と懇意になり(失恋仲間として意気投合)、なんやかんやで一足先に社会人になった彼の補佐に収まり、さらに彼が出世するたびに俺の地位もあがって今では社長秘書である。
鼻水と失恋が取り持つ縁。人生、なにが幸いし、どう転ぶかなんてホントわからない。
とにかく、社長は、チョロくて惚れっぽい。
十年の間に、恋愛系のトラブルはほとんど網羅したくらいの恋愛トラブルメーカーである。
婚約破棄一回。
結婚詐欺未遂一回。
美人局に引っかかりそうになること一回。
その他、ふらりとよろめいたΩなど…数え上げたらキリがないほどである。
ちなみに夢川社長は由緒正しい家柄の御曹司で例にもれず生粋のαだ。
αはおおむね出来が良くエリート街道をまっしぐらな人物が多い。当然モテる。選り取り見取りなはずなのに、どうしてそうヘンなのばっかりに引っかかるのか…謎だ。
αにも個性があるのだと、彼に出会って俺はそんな当たり前のことに気付かされた。
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