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番にするなら、その前に必ず相手を俺に確認させろと言い含めてあった。
これが守れないようなら、面倒を見るのはやめて、――全部の繋がりを断つと云い置いた。
……どっちが上司か、というくらい上から目線の言い草だが、それだけのフォローはしてきたのだ、…ずっと。
俺が相手を見極めて納得すれば、結婚でも番でも好きにすればいい。
――それが、なにをトチ狂ってあんなことを言いだしたのか。
俺は憤りに任せてホテルを飛び出すと、街の雑踏に紛れた。
* * *
「ハ…ッ、ハァ…くそ…、」
息が荒い。
呼吸が苦しい。
躰が――熱い。
自分の身体の異変に気付いたのは、ホテルの最寄り駅付近まで来た時だ。
雑多な匂いに紛れ、普段は気にしたこともないαのフェロモンがやけに鼻につくなというのが最初の兆候だった。
やがて躰が震え、ぞくぞくとした痺れが腰から背筋にかけてを断続的に走りだすに至り、俺は自分の状態を否が応でも知る。
(なんで……)
ついには歩行も困難になり、路上の端、ビルの狭間に身を寄せた。
急に始まった発情期に、最悪な気分で臍を噛む。
俺はΩだ。
だが、Ωといっても体質的にあまりΩとしての特徴を有していない珍しいタイプのΩだった。
平凡な容姿に平凡な能力。
俺の見かけは、むしろβに近かった。
特質もそうだ。
三か月に一度の発情期も、俺は一年に一度しかないし、抑制剤も一番軽いものの服用で問題なく日常生活を送れるくらいだ。
むしろ飲み忘れても平気なくらいだったから、自分でも実はβじゃないかと社会人になってからも再検査した程である。
だから、こんな酷いヒートに見舞われるのは初めてだった。
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