運命のつがい

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 歩にしても弘にしても、あまり俺には似ていない。  俺の遺伝子どこいった…と冗談めかしてぼやいた俺に、夢川は「歩の耳は君似でさくら貝のようにかわいらしいし、弘のつむじは君と同じ左巻きですよ、…ほら、かわいいでしょう。二人とも君と一緒です」とにこやかにのたまった。  恥ずかしすぎて俺は黙りこむしかなかった。  ……夢川がまさか俺に対してこんなに甘くなるなんて、まったくもって予想外だった。  先輩と後輩、上司と部下という関係を経て、俺たちは結婚し、夫夫(ふうふ)になった。  二人の子供にも恵まれ、――おそらく家庭円満で、ある意味理想的な家族として周りからは見えているだろう。  しかし――、問題がまったく一つもないわけでもない。  むしろ長年先送りにしてきたその「問題」を俺はどうするべきかとここ最近、それで頭を悩ませている。  四歳児に言ってもわからないかも…と思いつつ、俺はかわいい我が子を諭した。 「ひろむ、うなじを噛んではダメだよ」 「うぇ? しゃちょー、ちゅーちゅーするよ?」  ……なぜか我が家の子供たちは、父である夢川のことを社長と呼ぶ。  ついついくせで「社長」と呼んでしまう俺に主な原因はあるのだが、夢川は外で他の者たちにも「社長」と呼ばれることが多いので、いつのまにやら社長呼びが定着してしまっていた。  ちなみにすでに小学校に通っている歩は家の中では俺のことを「父さん」、夢川のことをやっぱり「社長」と呼ぶ。  外では、さすがに最近外聞を考えるのか、俺は「父さん」で夢川を「父さま」と使い分けているようだ。……七歳児にして、教えたわけでもないのにすでに処世術を身につけているっぽいところがさすがだと思う。  俺が七歳児のときにはもっと動物的だったし、あまり深く物事を考えていなかった気がする。
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