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「──辛くないですか? 振り向いてくれないかもしれない人をずっと想い続けるって」
あたたかくて、深い声。思わず息を飲むと、限りなく優しい眼差しがそこにあって、自分の中の何かがグラリと傾くのを感じた私は、それを押し止めるように慌てて言葉を発した。
「そうですね……辛いです。だけど……」
「だけど?」
「それでも傍にいたいんです。陽ちゃんはただ、そこに存在してくれるだけでいいというか……。焦って告白して、フラれて、気まずくなって、傍にいられなくなることの方が私には耐えられません」
心情を吐露する私にうんうん、と頷いた片倉さんは、ふと何かに気付いたように苦笑を浮かべた。
「あれ? ここに約一名、焦って告白したヤツがいますね。恥知らずだから、気まずさも感じずに厚かましく友達付き合いをしているみたいですけど」
「あっ……いえ、そういう意味では……!」
慌てて否定すると、片倉さんは途端にいたずらっぽい笑みを浮かべてから、気持ちを切り換えるように深く息をついた。
「まどかさんの気持ちはわかるつもりです。僕も同じような状態ですからね」
そうか……確かにそのとおりだ。片倉さんも私のことをあきらめずに待ってくれているんだものね。そんな状態で友達付き合いをしているって、やっぱり良くないことなのかな……。
そう言うと、片倉さんは他愛のない心配だというように一笑した。
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