1077人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
どうやらむっちゃんたちの結婚話は、ハラショーのミルフィーユくらいサクサクと進んだらしい。
婚活イベントの二日後、十五日の火曜日。定休日だけの贅沢、『眠くなったら存分に昼寝する』を実行していた私は、思いがけない人に起こされて寝ぼけ眼のまま垂れかかったヨダレをすすった。
「まどかさん、お休みのところ申し訳ないけれど起きてちょうだい」
この凛としたアルトの声、淡くふんわりと漂うみずみずしいバラの香り。
「えっ、樫崎さん?」
驚いてモシャモシャになった髪をかき分けて見ると、そこには相変わらずバッチリ決まったスタイルの樫崎さんがいた。今日はライトグレイにホワイトのパイピングが入ったツイードのジャケットとスカート。見るからに上質な装いだ。
「あれ? な、なんで私の部屋に?」
飛び起きて時計を見ると、もう夕方の五時過ぎ。昨夜から海外ドラマのDVDを観続けていたから、思いがけずたっぷり昼寝してしまったみたい。
「ついさっきご挨拶に伺ったところよ。モンシュー……いいえ、睦さんに寝てるだろうから起こしてきてほしいと頼まれたの」
ああ、そっか。結婚に向けての挨拶ってやつ?
最初のコメントを投稿しよう!