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すべてを聞いた星ちゃんは、なぜか意外そうに少し驚いた様子だったけれど、やがて述懐するようにつぶやいた。
「そうか……つらいよな。わかるよ」
最初はピンとこなかったけれど、星ちゃんも絶対に振り向いてくれない人を好きになってしまった過去がある。形は違えど、私たちは同じような痛みを経験し、共有しているんだ。
「星ちゃん、私……どうしたらいいんだろう? 今のこんな状態じゃ、ミクリヤでの仕事なんて出来っこないよ」
差し当たる一番の問題はそれだ。頭を抱えて弱音を吐くと、星ちゃんは呆れたように苦笑いした。
「まどか的には大変だろうけど、客観的には何も起こってないんだから、何もする必要はないと思うけど。幸い明日から休みだし、今のまま少し時間を置いてみたら?」
「えっ?」
今抱えているこの辛さを一刻も早くどうにかしたくているのに『時間を置く』って? チーズか何かを熟成させるのとはわけが違うと思うの……。
そう反論すると、星ちゃんが「だったらさ」と言葉を重ねる。
「ミクリヤを辞めるしかないんじゃない? 傍にいるのが辛いなら物理的に距離を置くしかないけど、そうすると今度は陽ちゃんに会えなくてもっと辛い想いをするかもね」
「うっ……」
その辛苦は驚くほど容易に想像がついた。なんというジレンマだろう。
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