5.魂を運ぶラザニア

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 忘年会から帰宅した私は、最初の休日を忙しく過ごした。  自分の気持ちについて結論を出したものの、心のどこかにはベッドにもぐってメランコリックに過ごしたい『私』も存在している。でも一旦そうしてしまうと、暫く起き上がれなくなるんじゃないだろうか? という予感がした。  だから、そんな弱気は今年の汚れと一緒にやっつけてしまえ! とばかりに、ひとりで我が家の大掃除に着手。黙々と掃除をする私を見て、むっちゃんは「本当にまどかか? 中身は宇宙人じゃないか?」と怯えていたけど……。これまでの私はぐうたら標準装備だったから、むっちゃんの反応も致し方ない。  ミクリヤで働くようになってからじっとしているのが苦手になったというか、動かないでいるとかえって落ち着かない感じがするんだよね。これってやっぱり職業病なのかな? でも、ぼんやりと無為に過ごすより生産的だし、動いている間は陽ちゃんのことを考えなくて済む。こういう時、自分が単純構造で良かったなぁ、ってつくづく思う。普通の人だったら掃除しながらでも、ついつい考えが及んでしまうところだろう。  掃除に勤しみ、家族と一緒に過ごしている間は、陽ちゃんのことがこのまま自然とフェードアウトしていくんじゃないか? という手ごたえのようなものがあった。 けれど、やっぱりそう簡単に消えるはずもなく、夜ベッドに入ると、私が一人になるのを待ち構えていたように様々なことが頭の中を去来した。まるで日中追いやったものが夜の闇と共に姿を変え、オバケか何かになってあちこちから戻って来たみたいに。
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