5.魂を運ぶラザニア

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 えーと、明日は……むっちゃんは英理姉の実家へ行くみたいだし、両親は二日の初売りに備えて家でのんびり過ごすはず。私もそうしようと思っていたから特に予定はない。  片倉さんがこの間のことを引きずっていないのがわかってホッとしたけれど、いよいよ自分の気持ちを伝えなくちゃいけない時がきたのか……。覚悟は決めていたけど、やっぱり少し気が重い。だけどこればかりは自分の口でしっかり伝えないと。 『おはようございます。 この間のことはどうかお気になさらずに。 明日は家にいるつもりだったのでOKです』  そこまで入力して、ふと手が止まる。元日にまっさらな気持ちで初詣へ出かけて、なんの前触れもなく『付き合えません。ごめんなさい』って言われたら……どうだろう? 新年早々ケチがつくというか──いずれにしろお断りするわけだけど──やっぱりいきなり伝えるのは心苦しい感じがする。  ちょっと考えこんだ私は、文末に『初詣の後にお話ししたいことがありますので、その時間も確保していただけますか?』と付け加えて送信した。片倉さんなら何のことかすぐにわかるだろう。これで向こうも私も心の準備ができるはず……。  緊張して画面を見つめていると、既読がつくまでの数十秒と、返信がつくまでの数分がものすごく長いように感じられた。  ううっ……この画面沈黙がツラい。片倉さんはどんな表情で私のメッセージを見たんだろう? もしかすると『話がある』という一文に対して警戒感を持ったのかも……。  いろいろと埒もないネガティブなことを想像していると、画面にパッとスタンプが現れた。
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