5.魂を運ぶラザニア

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 手水舎で清めた後、お参りの順番を待つ列に並ぶ。そういえば以前ここへ初詣に来たのはいつだっただろう? 確か高校受験の年だったから……うわっ、十六年ぶり!? 感覚的にはそんなに久しぶりという感じはしなかったけれど、具体的な数字にするとビックリしてしまう。 子どもの頃は、ここで毎日のように月菜たちと遊んでたんだよね……。銀杏拾いをした火伏せのイチョウや、みんなで木登りしたモチノキが今も残っていて懐かしい。 普段は閉まっている小さな社務所も、今日は色とりどりのお守りや縁起物が並び、アルバイトと思われる巫女さんたちが忙しそうに対応中。その隣には町内会と商店街のテントが張られ、法被(はっぴ)を着た担当役員の人たちが無料で甘酒を配ったり、玉こんにゃくを販売している。 その中に陽ちゃんもいるのでは……と緊張が走ったけれど、幸い姿はなく、ホッと胸を撫で下ろした。 そこへ元気な呼び声と共に出汁醤油とスルメのおいしそうな匂いが漂ってきて……ああっ、お腹のアメリカ人が騒ぎ出すぅ! 「う~ん、なにやらいい匂いがしますね」  魅惑の香りは片倉さんにも届いたらしく、高い鼻をすんすんと鳴らしている。 「あそこで玉こんにゃくを売ってるみたいです。帰りに食べませんか?」  そう提案すると、片倉さんはすぐに「いいですね」と賛成してくれた。
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