5.魂を運ぶラザニア

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「うちは両親が米沢出身なので、玉こんにゃくは馴染み深いんですよ。醤油や調味料だけで煮る人もいますけど、やっぱりスルメを加えた方が断然おいしくなると思うんです」  うんうん、わかる! イカは旨味成分が豊富だから、一緒に煮るとすごく奥深い味わいになっておいしいんだよね。そこへ練りからしをちょっこっと付けて食べるとまた絶品なんだ。……ううっ、早く食べたい!  しかし、ご両親が米沢出身で片倉って、本当に片倉小十郎と関係があるんじゃないかな? 片倉さんは「そうなんですかねぇ」と、あまり興味はなさそうだったけど……。  ほどなくして順番が巡って来たので、私は『参拝のしかた』という案内看板を盗み見ながら、至ってぎこちなくお参りした。いろいろ叶えたい願い事はあったけれど、まるっとひっくるめて『去年は転機を与えてくださり、ありがとうございました。今年も良い年になりますように』とだけお願いした。  チラッと隣の片倉さんを見上げると、真剣な眼差しがまっすぐ前を見据えている。何かお願い事をしたのかな? だとしたらどんなことだろう? そんなことを考えていると、急に鼻がムズムズしてクシャミが出た。  振り向いた片倉さんはいつものふにゃっとスマイル。次の人に場所を譲って本殿から下りると、優しい声が「ちょっと待ってください」と私を呼び止めた。  なんだろ? と首を傾げる私に濃紺のマフラーが巻かれる。柔らかくて暖かい、今まで片倉さんが身につけていたマフラーだ。
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