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至って普通の挨拶だというのに、一瞬でパニックに陥った私は完全に脳みそがフリーズ。酸素が足りなくなった金魚みたいに口をパクパクさせるばかりで、言葉がひとつも出てこない。きっと今の私は顔色が赤くなったり青くなったり忙しいことになっているだろう。
「どうしたの? まどかちゃん。大丈夫?」
奇妙に映ったのか、滑稽に映ったのか──おそらく両方だろうけど、真珠ちゃんは今にも吹き出しそうになりながら、私の顔の前で手をヒラヒラさせた。
陽ちゃんも怪訝そうに首を傾げていたけれど、ふと気がついたように片倉さんのマフラーに目を留める。その視線は私へ戻らずにマフラーの持ち主へと注がれた。
「あけましておめでとうございます。いつもまどかがお世話になっております」
きちんと一礼する陽ちゃんに片倉さんもニッコリ余裕の笑顔。
「いいえ、こちらこそ。あけましておめでとうございます。町内会のお役目ですか? 元日からご苦労さまです」
直接の付き合いがあるわけじゃないから、会話は発展することなくそこでブチッと終了。二人の眼差しは共通の接点である私に向けられた。
ええっ!? どうしよう……どうしたらいいんだろう? 誰か助けてくださーい!
心の中でそう叫ぶと、真珠ちゃんが思い出したように手を打った。
「ねぇねぇ、まどかちゃん。おみくじはもう引いた? まだだったら一緒にどう? 今、美咲ちゃんと引きに行こうって話してたところなの」
うわぁ、ナイスタイミング! 真珠ちゃんたちマジ天使! とにかく今はこの場を一時離脱させていただきたい……!
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