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「い、いいね! おみくじ! 引こう! 引こう!」
あっ……だけど、陽ちゃんと片倉さんを置いて行ったらまずいよね……と二人を見上げると、片倉さんが「いってらっしゃい」と微笑んだ。
「僕はここで甘酒をいただきながら、御厨さんとお話ししていますから。気兼ねなくゆっくりどうぞ」
「えっ……」
意外な反応で戸惑う私に、陽ちゃんも「行って来いよ」と同意してくれる。本当に大丈夫なのかな? 気持ちを整えたい私としてはありがたいけど……。
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
申し訳ないような、けれど半分逃げ出したいような気持ちでその場を離れる。社務所のところまで行ってからコッソリ振り返ると、クリーニング屋のおばちゃんと甘酒係を交代した陽ちゃんが、甘酒の紙コップを片倉さんへ手渡しているのが見えた。
ああ、それにしてもビックリした……。まだ心臓がバクバクいってる。陽ちゃんとは、休み明けまで会わないだろうと思っていたから完全に油断してたよ。
「ねぇねぇ、あの人ってまどかちゃんのカレシ?」
ふぅっと一息ついたところで、真珠ちゃんと美咲ちゃんが年頃の女の子らしい興味津々の視線を向けてくる。
「違う、違う! ただの友達だよ」
そう否定すると途端に不服そうな声が上がった。
「そうだったんですかぁ」
「なんだぁ、つまんなーい。まどかちゃん、好きな人とかいないの?」
くっ、ごめん……。真珠ちゃんのお父さんが好きなんだよ……とは、とても言えないけど。もし打ち明けたらどんな顔をするんだろうな……。
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