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「いえ、いいことだと思いますよ。でもご心配なく。今日の我が家は賑やかなんです。ALTのウィリアムとそのご両親が遊びに来ているんですよ。日本の正月を体験したいらしくて」
ああ! この間ミクリヤにも来てくれたウィリアムさんね。
「でも……ご迷惑じゃないですか?」
二人きりじゃないことはホッとしたけど、お客様がいるのならやっぱり遠慮したほうがいいような……。
「全然問題ないですよ。三人のことは母が対応していますし。そうそう、桜木さんの好きなネコも五匹いますよ」
ええっ!? ネコ!?
「そ、それは……!」
一匹でもかわいいのに、それが五匹!? 腕に抱っこして、膝に載せて、肩に載せて、頭に載せても、まだ一匹余っているなんて……! ネコ好きにとっては夢のようなお宅だ。
それだけで気持ちがガクンと傾いてしまう私って……我ながら本当に単純。ううっ、でもネコまみれになりたいし……いや、だけど待て。それはあくまでオマケであって、本来の目的は『片倉さんに付き合えないと伝える』ことだぞ、自分。そこは決して横道にそれちゃいかん。
「どうですか? うちの子たちはみんな人懐っこいですよ」
うわっ、なんという悪魔のささやき……! 早くも脇の獣道へそれてしまいそうだ。
迷い過ぎて唸り出した私がおかしかったのか、片倉さんは笑いながら「行きましょう?」と先に立って歩き出した。まだ少し迷う気持ちもあったけど、今日話すと決めたんだし、他に適した場所がないんだから仕方がない。
私は心を決め、小走りに駆けて片倉さんに追いついた。
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