5.魂を運ぶラザニア

23/86
前へ
/388ページ
次へ
 あまりの愛らしさに悲鳴を上げそうになったけれど、驚かせてはいけないと懸命に抑える。五匹は、真っ白、真っ黒、茶トラ、サバトラ、白黒と、それぞれに模様が違うので認識しやすい。  片倉さんに勧められてソファへ座ると、早速茶トラの子が様子伺いに近寄ってくる。そっと頭や背中を撫でてから抱き上げると、おとなしく膝の上に載り、私を見上げて「なー」と鳴いた。  それが安全宣言だったのか他の子たちも集まってきて、『ネコまみれになる』という私の願いは早々に叶えられた。 「めんこい……めんこ過ぎるー!」  感動のあまり手が震えてしまう。そんな反応に微笑みながら、片倉さんが緑茶をいれて出してくれた。 「うちの子は母が拾ってきたか、もらってきた子ばかりなんですよ。頼まれると断れない性質で……。人間よりネコが多いってどうなんでしょうかね? 時々、ネコに飼われてるんじゃないかと錯覚することがありますよ」  そう苦笑すると開口で繋がっている次間から「聞こえてますよー」というお母さんの声が近づいてくる。 「めんこいからいいじゃない。亮平だって嫌いじゃないくせに」  茶目っ気のある表情で「もうっ」と片倉さんを睨む。いつの間にか白い割烹着姿になっていたお母さんは、笑顔で私に向き直った。 「これからみんなでお昼にお雑煮を食べようと思っていたところなの。まどかさんも一緒に食べましょう? お餅は幾つ食べられるかしら?」  えっ、お昼? もうそんな時間なんだ。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1079人が本棚に入れています
本棚に追加